前回に続いてみえない友達のいる女の子の絵本「くまさん」をとりあげます。「アルド・わたしだけのひみつのともだち」では、女の子が孤独を感じた際の支えにアルドをしていたのに対して、「くまさん」では、単純に女の子の想像力の豊かさを描いているようです。

 

〔あらすじ〕 ある晩、女の子がぐっすりと眠っていると窓から大きな大きなくまさんが入っていきました。あっという間にくまさんと仲良くなった女の子は、一緒に寝たり、食事をあげたりと楽しく過ごしますが、次の日の晩にくさまさんは、帰っていきます。

 

ハイライトは、冒頭のくまさんの登場シーンです。作者レイモンド・ブリッグスの特徴であるコマ割りによって、小さくコマを割って徐々に女の子の部屋の窓に近づいていく様子を描ているので、最初はくまさんの大きさが分かりませんが部屋に入る瞬間は、ドーンと見開き1ページを使ってくまさんの大きさを表現しています。この時の迫力は、まるで映画のようです。この絵本、とにかくデカイ(37cm×27cm)んですが、その理由は、登場シーンを見れば納得です。

 

実は、この絵本にはもう一頭くまが出てきます。それは女の子が持っているくまのぬいぐるみです。何回も読んでいると妙に気になってきます。くまさんよりぬいぐるみを目で追ってしまう程に。ぬいぐるみなので表情は変わりませんし自分から動かないのに、まるで意志があるかのような錯覚を覚えてしまいます。女の子のお気に入りでいつ持ち歩いているぬいぐるみは女の子の想像の産物であるくまさんと現実をつなぐ役割をしているのかもしれません。

 

レイモンド・ブリッグスは、「ゆきだるま」(アニメ「スノーマン」の原作です)や「さむがりやのサンタ」で有名ですが、核戦争をテーマとした「風が吹くとき」の作者としても知られています。この作品には、個人的にちょっとした思い出があるのですが、次回に引っ張ります。正直、引っ張るような話じゃないですけどね。
ちなみに訳者角野栄子は、映画「魔女の宅急便」の原作者です。

 

4097270702 くまさん
レイモンド ブリッグズ Raymond Briggs
小学館 1994-12

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