ヘンリーダーガー展に行ってきたと前々回に書きましたが、そこで見つけたのがアール・ブリュット・ジャポネ展のチラシ。
パリで開催されたアール・ブリュット・ジャポネ展の様子はNHKで放映されていたのを見て興味を覚えてたのですが、日本に凱旋していたとはつゆ知らず。
どんな展示かといえば以下の通り(埼玉県立近代美術館のサイトより抜粋)
アカデミックな美術教育を受けていないひとたちが生み出すかたち。自由な発想と創るよろこびに充ちた作品には、人間の純粋な創造性を垣間見ることができます。文化の違いを超えて観るひとの心をとらえるアート、それが「アール・ブリュット(生〈き〉の芸術)」。2010年に国内から63人の作家が参加してパリのアル・サン・ピエール美術館で開催された好評の展覧会が日本に凱旋。
これは面白そうだと埼玉県立近代美術館へ。美術館まで20キロも無さそうなのでチャリで向かう。
この日はとても暑くて、あっと言う間に背中に汗が。しかも外環脇の道は坂道が多くより発汗。
汗をふきつつ「暑い。暑い。」「お!ユニオンだ」とか呟きながらなんとか美術館に到着。
近代美術館は北浦和公園という大きな公園の中に併設されていて、公園の木陰は暑さを和らげてくれた。
ヘンリーダーガー展とは場所(原宿)が違うからか、会場内は年配の方が多い。作品自体の魅力は負けず劣らずなんですねけどねぇ。
作品の半分以上を見終えた頃に先生達に引率されて養護学校?の生徒さん達が入って来たのが印象的。
気になった作家を幾つか上げると本人は意図していないが故にマスコミ、商業主義に対する皮肉が利いている平岡伸太、M.K.、過剰に書き込まれているのに圧迫感が皆無でユーモラスな高橋和彦らの絵画、オシャレな上里浩也の飛行機やクレジットカードの模型・・・・
上げていくと切りがないのですが、中でも一番気に入ったのは魲(すずき)万理絵の作品です。
とにかく絵に迫力が有るし、単純に巧いのです。彼女は元々絵心があって勤めている会社のニュースレターの挿絵をイラスト風タッチで描いているそうで、「なんで今の自分の(性器や鋏をモチーフとして多用する)スタイルで描かないの」と訊ねると「見た人がビックリするでしょう」と答えたそうです。
つまり彼女は仕事と自分の思いのままに描く作品を書き分けられる。この点は恐らく他の作家達とは違うはず。
その意識の差が彼女の作品をより魅力的なモノにしているのでしょう。そう考えるとアール・ブリュット「生の芸術」の概念から外れるような気もします。
そのような絵画絵画した作品にこの期に及んでも魅力を感じてしまのうか、自分はっていう感じもしますがいいモノはいいので。
たしかNHKの番組でもパリでのアール・ブリュット・ジャポネ展の主催者は魲さんの作品が展示のコアだと語っているように記憶しています。
上で述べたように作品自体とても面白かったのですが、ついついどんな人が作っているのかという背景が興味が移ってしまうのは邪道なのでしょうか?
まあ、背景に目がいってしまうのは絵でも小説でも音楽でも一緒なのですが。アール・ブリュットにおいては特に。
でも作品のキャプションにもカタログにもその欲求を大いに満たす配慮はなされていて、そこをだけを読んでも興味深い。
施設の職員に恋をしてしまった途端に作品を作るのを止めてしまう人や作品を作る事自体より、作品に施設の職員を登場させた事実を伝える事に熱心な人等様々なエピソードが記述されている事を考えると背景に興味を持つ人はきっと沢山いるのでしょう。
展示されている作品を眺めていると性への興味、乗り物に対する偏愛、メディアからの影響等一般人となんら変わらなくて、アール・ブリュットだ、アウトサイダーだと殊更「差」を強調しなくてもいいのかなというのは強く感じしました。
最後に常設展にチラリと覗いて帰りました。ピカソやレンブラントが有りましたが、今村紫紅の掛け軸が一番面白かったです。