深夜2時。男は、書斎で一人くつろいでいた。
グラスに浮かべた氷を軽く揺らし、ウィスキーを口に流し込む。喉から胃にかけて熱さがしみ渡っていくのに呼応するかのようにBGMのピアノトリオの演奏も熱を帯びてゆく。その熱にほだされるように男は、腰掛けていたチェアから立ち上がり本棚の前へと移動した。一冊、一冊、ゆっくりと本の背表紙に這わせていた指が止まり、一冊の本を抜き出した。
「やっぱり、真夜中の酒の相棒は、コイツが一番だよ。」と満足そうに呟く男の手には、絵本「まっくろネリノ」が。
あらすじ まっくろネリノは、その名のとおり真っ黒な鳥です。カラフルな毛色をしているネリノのにいさん達は、黒くて地味なネリノをいつも仲間外れにしています。でもある日、にいさん達は、素敵な色をしているので捕まってしまいました。にいさんたちを気の毒に思ったネリノは、救出へと向かいます・・・・
「男前に絵本を紹介」にチャレンジしてみましたが失敗でした。(第一、書斎やらウィスキーやらは、フィクションですし。)
失敗はとりあえず置いといて、「まっくろネリノ」は素敵な絵本です。
全てを塗りつぶす黒では無く、全てを優しく包み込む黒を基調としてパステルで描かれた色づかいは、深夜のひっそりとした静かな空気にピッタリと合います。
真夜中、いつも点けているテレビを消して「まっくろネリノ」をゆっくりと眺めて過ごすのもたまには悪くないものですよ。
まっくろネリノ (世界の絵本) ヘルガ=ガルラー やがわ すみこ 偕成社 1973-07by G-Tools |