小学中級むきと絵本「ノラネコの研究」の裏表紙には書かれていますがトンでもない。小学生向きなんて。大人が読んでも十分どころか十二分に楽しめる絵本です。
子供騙しなんて言いますけど、子供騙しには子供も騙されません。大人が読んで楽しい絵本じゃなければ子供も楽しめないと思います。
〔内容〕 ネコ科動物の生態を研究している筆者がナオスケというノラネコの一日の過ごし方を午前10時~午前6時までじっくりと観察。
とにかく面白いこの絵本。何故そんなに面白いか?それは筆者が本気だから。ネコ科動物の生態の研究者が本気で何の変哲もないノラネコの研究をしているからなのです。
その本気度は町中のノラネコの様々な特徴を書きつけたネコカード作りから始まり(その数、百枚以上!)、ノラネコの観察をする場合は丸一日をかけてじっくりと。ノラネコのナオスケが寝てしまえば筆者もジッと待つ。ナオスケは一日の内にあわせて十八時間以上も寝ているので筆者の苦労が忍ばれます。
こうして丹念に丹念に筆者が調べた成果を描いた絵がまた楽しいのです。挿絵の平出衛は他にもネコちゃんのさし絵を書いているようなので本気でネコ好きなのでしょう・・・・だと思います。
毛づくろいをしている様子、物陰から辺りをうかがっている様子、警戒しながらゴミ箱を漁る様子、ひとつひとつの動作がとてもリアルです。
また、マンガのようにコマを割ってノビノビとした描き方自体がネコちゃんのもつ自由で飄々とした雰囲気を出すことに一役かっています。
只、楽しいだけではなくネコちゃんの生態も分かりやすく丁寧に書かれていてとてもタメなるこの絵本は、ネコ好きの方はモチロンですが、ネコ嫌いの方にこそ読んで頂きたい絵本です。
ノラネコの研究 (たくさんのふしぎ傑作集) 伊沢 雅子 平出 衛 福音館書店 1994-04-15 by G-Tools |