内気で友達が出来なくて寂しがっている小学生のA少年がいるとしましょう。さてA君を元気づけるにはどうしたものだろうか?友達になってあげるのが一番かもしれませんが、やっぱり同世代の友達と一緒に居るのが一番楽しいでしょう。
では絵本「カングル・ワングルのぼうし」をプレゼントするというのはどうでしょうか?絵本に限らず映画、本、音楽は困難な状況や障害をダイレクトに解決はしてくれませんが、乗り越えるに手助けをソッとしてくれます。

 

あらすじ  クランペティの木の上に座って、顔が隠れる程大きな帽子をかぶっているカングル・ワングルは誰も遊びにきてくれないのでとても寂しい気分でした。しかしカングル・ワングルの帽子を見たカナリヤが「その素敵な帽子に巣を作れらせてください」と訊ねて来ました。それからはドンドンと動物達が訊ねてきます。

 

顔が隠れる程リボンやレースにすずがついている大きな帽子とはカングル・ワングルの頭脳をさし、頭脳から生み出される想像力が豊かで美しい事を表しています。その帽子に実在しない動物達(はったりネズミ、びっくりこうもり等)が住まわせてと訊ねてくる。
つまりこの動物達は空想の産物。また、地上とは隔絶した木の上に住んでいるカングル・ワングルは社会生活が苦手な内向的な性格であるようです。

 

この絵本の詩(文章)を書いたのはエドワード・リア。筆者略歴を見ると「幼い時から病弱で7歳ごろからテンカンの持病に悩まされ作詩や絵画に熱中するする内向的な人となりました」とあります。
カングル・ワングルとは、エドワード・リア本人だったのです。動物達がすべて空想とするなら、カングル・ワングルもしくはリアは空想で孤独を紛らわす寂しい男の子なのでしょうか?
そうでは有りません。リアはその想像力と画才を武器としてヴィクトリア女王に絵の手ほどきをするまでの人物となりました。また貧しい人に心を寄せを収入の大部分を分け与えたそうです。
つまり社会的に成功したひとかどの人物となったのです。

 

一方、絵をつけたのはヘレン・オクセンバリー。巻頭にてこの絵本をジョンに捧げています。
ジョンとは、「おじいちゃん」等の作品で有名な絵本作家のジョン・バーニンガム。捧げられたバーニンガムが内向的な少年だったかまでは分かりませんが、(以前、当ブログで取り上げた「アルド・わたしだけのひみつのともだち」は孤独で想像力が豊かな少女が主人公でした) リアの詩にシンパシーを感じて取り上げたのは間違いないでしょう。

 

内向的である事も孤独であることも、そんなに悪くはないのです。大切なのは、その状況をどう生かすかです。
と少年Aに語りかけても「絵本なんてイラナイ。みんなが持っているから、友達を作るためにwiiがPSPを買ってよ」と言われると、返す言葉もないですが。

 

4593500095 カングル・ワングルのぼうし
エドワード・リア ヘレン・オクセンバリー
ほるぷ出版 1975-10

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