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2013.01.25
ブログ山道をゆくと・・・・「やぎのめーどん」
久しぶりに絵本の記事でもと思って、何を描こうかと家の中を漁って出てきたのが福音館書店 たかくあけみ「やぎのめーどん」だったので今回はこれで。 なずな屋で100円だった代物。なずな屋は西荻にある古本屋。前は興居島屋というお店だったのですが、リニューアルしたようで。とてもいいお店です。 飼い主のおんなの子とやぎのめーどんが家から山へと散歩に向かい、そして家に帰っていくとお話。絵本では良くあるパターンです。 発行が1998年と最近です。いや、最近ではないですよね。年を取ると90年代も最近に感じてしまうのですよ。まあ、比較的ね。最近。 ということで絵が新しい。ところどころに描かれている動物達がCMかなんかのキャラクターぽい。 めーどんとおんなの子は終始写実的に描かれていますが、山道に生えている木や石には顔が描かれており、めーどん以外の動物はキャラクターぽかったり、思い切り簡略して描かれたりしています。 例えば草と一体化してたりと。つまり、木や動物達は現実ではなくあっちの世界の住人なのです。 おんなの子がしだを食べるとその動物達の存在に気がつき、めーどんのおちちを動物達に与えてみんなで踊るというシーンがこの絵本のクライマックス。 えっ?そのしだって、もしかして・・・と邪推したくもなりますが。笑 めーどんはおんなの子に比べると2倍以上は大きくい。こんなやぎがいればあっちの世界に踏み入れてもちゃんと帰ってこれる。頼もしい守護者という訳です。 絵柄のユーモラスさとかわいさ、淡い色彩の心地よさに、「めーどん めーどん めーめーどん どんどん あるこう めーどんどん」 とリズミカルな文章共にテンポ良く進む展開。そして全編にうっすらと漂うサイケ感。これらが本作の魅力です。 作者である、たかくあけみさんはネットで調べた限りは絵本を多くは描かれていない無いようで。是非、めーどんのような良い作品を今後も描いて頂きたいものです。やぎのめーどん (こどものとも700号記念コレクション20)
たかく あけみ
福音館書店 2014-04
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2012.02.09
ブログキツネばかりが悪いわけじゃない-「キツネ」
日本では人を化かすと言われ、英語では狡い事をcrafty as a foxという慣用句が有るそうでキツネは和洋問わず何故か悪者にされがち。 単独で行動ですることや顔つきのせいでしょうか? なんだか不憫。 今回ご紹介する、文M・ワイルド、絵R・ブルックス「キツネ」でも一見するとキツネはネガティブに描かれていますが、よくよく読むとそうでもないのがこの絵本のポイント。 あらすじは火傷を負って飛べなくなったカササギと片目の見えないイヌがお互いのハンデを補いながら仲良く暮らしているところにキツネが現れ、カササギをそそのかしてイヌから引き離すというお話。 あらすじからだとやっぱりキツネが悪者のようですが、カササギ、イヌ、キツネがそれぞれに特異な性格が設定されていて、一概にキツネが悪いとは言えない構造になっています。 イヌは心優しいが単純で騙されやすい。 カササギはそこそこ賢いが、利にさとく腰が座っていない所がある。 キツネは一人で生き抜く強さを持ち、イヌ達とは違い身体的なハンディも負ってはいないが、嫉妬深くプライドが高い為、他者と親密な関係が築けない。 また、イヌはキツネに対してフレンドリーに接しますが、カササギはキツネを信用ならないと警戒します。 このような態度がキツネを嫉妬を抱かせたきらいもあります。 一方、カササギはキツネは信用ならないとイヌに忠告していながら、ついついキツネの口車に乗ってしまう。 つまりこの動物達は我々人間が持つ嫉妬や猜疑心、欲望を持っていて、どの動物が特に悪いという話ではないのです。 自分の不幸の身を歎き、あっさり欲望に負けてキツネに騙されてしまうカササギが一番人間らしいというか、自分に近いものを感じた一方でキツネの孤独と嫉妬混ぜこぜにしながらも独立独歩で生きているスタイルに惹かれる部分も有り(モチロン、他人を陥れるのは感心しませんが)、そこは作者も同じで、だからこそタイトルが「イヌ」「カササギ」ではなく「キツネ」なのでしょうし、一番魅惑的な容姿に描いたのでしょう。 ラストシーン、キツネによって住み処から遠く離れた灼熱の砂漠に置き去りにされてしまうカササギは、このままここで死んでしまっていいとも考えてますが、自分を待っていてくれるイヌの姿を思い浮かべ奮起して歩みはじめます。(羽を怪我しているので飛べないのです) 物語はここで終わりを迎えます。 無事に着いたとも着かなかったとも書かれていません。 また二人で仲良く暮らしたかもしれませんし、力尽きてんでしまってかもしれません。 仮に辿り着いてもイヌは待っていないケースも有り得るし、案外道中で居心地の良い場所を見つけて住み着いてしまうかも。 カササギならやりかねません。自己正当化は得意そうです(笑) しかし諦めずにまず一歩踏み出したのは事実ですし、それで今の時点では充分なのでしょう。 先の事は誰にも分かりませんから。 ストーリーについてばかり触れてしまいましたが、絵、フォント、テキストの配置にも力を入れた作品でご興味の沸いた形はお手に取ることをおススメ致します!キツネ
マーガレット ワイルド ロン ブルックス
BL出版 2001-10
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2010.11.20
ブログさびしい話?-いぬおことわり!
今回取り上げるのは絵本「いぬ おことわり!」(絵H.A.レイ 作マーガレット・W・ブラウン)です。 H.A.レイはひとまねこざるの人。どおりでお猿さんの雰囲気が似ているわけです。レイさんはドイツ生まれ。 あれ?ひとまねこざるの舞台はアメリカじゃないのと思ったら、ブラジルやらフランスやらに住んでアメリカで生涯を終えたそうです。 在仏時は第二次世界大戦中。ユダヤ系だったために大変だったようで、その辺りは絵本「戦争をくぐりぬけたおさるのジョージ―作者レイ夫妻の長い旅」に詳しい。 なんとナチスのパリ侵攻数時間前に脱出したそうです! マーガレット・W・ブラウンは児童書の編集者から絵本作家に転身し「ぼくにげちゃうよ」「おやすないさいのほん」等100冊以上の著作を残したそうですが、42才で早世。 どんなお話かと言えば動物園の近くに住んでいるスタンダードプードル?が動物園に行きたいのに犬は駄目と断れたので、飼い主のおじさんに人間の子供に変身させて貰い動物園見学をするというストーリー。 さて、困った。なんでこの絵本の感想を書こうと思ったんだろう(笑)ストーリーも上に書いたまんまだし、絵も色目が地味だし。書くことが無い・・・・ のでしょうがないから曲解しますかね。 この絵本で使われいている色は黒と黄色。なので地味、ともすれば淋しい印象を与えます。 淋しい気持ちで見始めると「ワライハイエナも。いました。でもこのワライハイエナは、わらっていませんでした」「さかさまのぞきをしているさる」「かがみのなかのともだちをつまかえようとしているちいさなチンパンジー」と登場してくる動物達まで何やら悲しそうに。そもそも犬が動物園に行こうすること自体が何やら妙だ。 ハッ!もしかするとこの絵本は実は滅茶苦茶サッドなのでは。 ・・・・まあ、そんな訳は当然無く。子供が読んだり、子供に読み聞かせると喜ぶタイプの絵本だと思います。 犬が人間に変装すれば子供達は喜ぶでしょうし、次々に動物が登場すればワクワク興奮することでしょうし。 ひねくれた人間が読むタイプの絵本では無かったのかも(笑)いぬ おことわり!
マーガレット・ワイズ ブラウン H.A. レイ
偕成社 1997-01
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2009.05.30
ブログデカダンスの香り―「ずどんと いっぱつ」
以前、取り上げた奥さんの作品(カングル・ワングルのぼうし)は夫であるジョン・バーミンガムに捧げれてましたが今回の絵本「ずどんといっぱつ すていぬシンプ だいかつやく」はジョン・バーミンガムから愛犬アクトンへと捧げられています。 あらすじ 子犬のシンプは醜さ故に飼い主のおじさんに町外れのゴミ捨て場に捨てられてしまいます。シンプは新しい自分の居場所を求めて町を歩き、さ迷うも見つかりません。それでもさ迷い続けたどり着いたのは、町の外の森の中。森にはサーカス団がテントを張っていました。 お腹がすいて物欲しそうにテントの中をシンプが覗くと、中にいたピエロのおじさんが食事を分けてくれた上に、暖かい寝床まで用意してくれました。 でもこの心の優しいピエロのおじさんにはある悩み事が。悩みを知ったシンプはおじさんを助けるため、ある行動をとります。 この作品はとにかくダークな絵がカッコいい。色の厚さ具合なんか最高。シンプもブサイクという設定ですが、コロコロとしていてとてもカワイイです。 特にお気に入りなのはサーカスの公演場面ですかね。なんと言うかページからデカダンスの香りがプンプンと漂ってくるのです。 踊り子のむちっとした白い肌、サーカスの支配人達のダンディなタキシード姿に陰気な表情、会場を包む熱気、サーカスの如何わしい空気がビンビンに伝わってきて、まるでロートレックのよう。 ネズミ達と過ごす一夜の荒んだ雰囲気もいいし、飼い主からポイ捨てされる様もモチロン可哀相なのですが、どこかユーモアが漂っていて面白いです。まあ、ジョン・バーニンガムの筆が冴え渡っていてページをめくるごとにシビレどうしでした。 作品の大半がシンプの心境を表していたのか重い色調で描かれているものの、ラスト3ページは優しい色合い。ピエロのおじさんと一緒に居れてシンプも幸せなのでしょう。ヨカッタ。ヨカッタ。ずどんと いっぱつ―すていぬシンプ だいかつやく ジョン バーニンガム 渡辺 茂男 童話館出版 1995-03 by G-Tools -
2009.02.16
ブログ環境省が犬猫の収容施設を拡大―「すてられたいぬ」
環境省、犬猫収容施設拡充へ 処分半減目指すhttp://www.nikkei.co.jp/news/shakai/20090127AT1G2102R26012009.html
↑1週間以上前の日経ネットの記事です。(以下抜粋。) 環境省は2009年度から、飼い主のいない犬や猫を収容する施設(全国約400カ所)の新築や改修を後押しする事業を始める。訪問者が犬や猫と触れあえる空間を設けるほか、スペースを広げて現在よりも長く収容できるようにする。引き取り手と出会う機会を増やすための工夫で、やむなく殺処分される犬や猫を17年度末までに半減させたい考え。 2、3年程前ですが、世田谷区八幡山の東京都愛護相談センターを見学した事が有ります。確かにゆっくりと収容されたワンちゃんやネコちゃんを見る雰囲気では、無かったような。(職員さんは施設について、とても丁寧に説明して下さいました。) 今回の試みにより殺処分から1頭でも多くのワンちゃん、ネコちゃんが救われるよう望みます。 ニュースの内容とリンクするのでついでに絵本もサラッと取り上げます。その名もズバリな絵本「すてられたいぬ」です。 タイトルは悲しいカンジですが、表紙のカラフルかつ力強い色使いから受ける印象そのままの内容で明るいお話です。 あらすじ 夏の暑い日、飼い主に捨てられたいぬ。新たな飼い主を求めて夏の海岸中を走り回ります。果たして新しい飼い主は見つかるのでしょうか? 話の中盤で現れる新しい飼い主を斡旋する手配師(犬)の存在が面白い。斡旋の報酬は骨。 この絵本のようにペットは実際は飼い主を選ぶことは出来ないのだから、責任を持って飼いなさいというメッセージを受取る事も可能ですが、まずは「いぬ」の新しい飼い主(ともだち)探しの奮闘振りを楽しめばよいのでは。すてられたいぬ (世界の絵本) カーチア ゲーアマン Katja Gehrmann 講談社 2003-07 by G-Tools